(V.スポーリン著、大野あきひこ訳、未來社)
スポーリンのエッセンスが詰まったバイブル、アメリカで半世紀に渡ってロングセラーを続ける「Improvisation for the Theater」の邦訳です。
*ゲームのやり方をブログで補足しています。
スポーリン著作リスト:
*すべてNorthwestern University Pressから出ています。
1.「Improvisation for the Theater」
「即興術」の原著。1963年から版を重ねるロングセラー。
2.「Theater Games for the Classroom」
学校で活用できるように先生向けに、よりわかりやすく書かれた本です。
3.「Theater Games for the Lone Actor」
シアターゲームを一人で実践するための本。
4.「Theater Game File」
カード形式になっていて、必要なものだけをワークに持っていけます。
5.「Theater Games for Rehearsal:A Director’s Handbook」
コミュニティシアターの演出家向けに、シアターゲームを台本劇のリハーサルでどう使うかを書いた本です。
その他の資料::
1.「The Compass:The story of the improvisational theatre that revolutionalized the art of comedy in America」 by Janet Coleman
ポール・シルズたちが起ち上げたアメリカ初のインプロ劇団「コンパス」について書かれた本。コンパス前の活動からセカンドシティ初期まで、インプロの創世期の貴重な記録。
2.「Something Wonderful Right Away」by Jeffery Sweet
コンパスとセカンドシティ関係者へのインタビュー集。2024年にスポーリン本人のインタビューを収録した改訂版が出版された。当時の様子が当事者の言葉からうかがい知れる。
「即興術」訂正(第2刷では訂正済みです):
●p232 1行目
「ること息みは問題が・・」
↓
「ること。息みは問題が・・」
●p279「体の記憶」
「過去に体験したとき点で体に留められた」
↓
「過去に体験した時点で体に留められた」
●p282「知能、知性」
「・・すべきでものはない」
↓
「すべきものではない」
●p288 「ゲーム形式を信頼すること」;
↓
「ゲーム方式を・・」
●p306 12行目
「・・・それ自体が全身・・・」
↓
「・・・それ自体で全身・・・」
●p316 最後
「見る時間を取る」の「見る」に傍点(原著でイタリックの個所)
●p319 下から3行目
「思い浮かべる」に傍点(原著でイタリックの個所)
訳者補足:
●p240「探って強める」
本書では「探る」、「強める」と日本語に訳したが、現場ではそれぞれ「エクスプロアー」、「ハイテン」と英語のまま使った方が、コーチングがしやすいかもしれない(「その音をエクスプロア!」、「その動作をハイテン!」など)。
*ハイテンは強調する、強めるという意味。
●p228、2行目「声を伸ばす」
原著では「extend」、つまり「延ばす」。スポーリンは声を、届かせることができる「物」として捉えたので「伸ばす」にした。
●p236下から15行目、「性格を変えてしまったおかしな人・・・」
原文は「schizophrenics」。これは「統合失調症」という強い意味があり、「メソッド」への皮肉と思われる。
●p21、13行目:「賞賛」
原語は「approval」。厳密には「是認」、「認めること」という意味である。『理論と基本概念』の部分は少しでも読みやくと考え、あえて「是認」より「賞賛」という訳語を選んだ。本文を読んでいただければ、単に褒められることではなく、認められることを意味していることがおわかりいただけると思う。
●p24、8行目: 「互いを必要としあう」
「互いを必要としあって」と訳しているところが、他にも数ヶ所ある。原語の「interdependent」の直訳は「相互依存」。「依存」という言葉はネガティヴな感じがしたので変えたのだが、国際理解教育のテキストなどでは普通に使っていることを知った。理論を語るときにはこちらの方がわかりやすいかもしれない。
●p25、下から5行目: 「発展」
原語は「extension」。外に向かって伸びゆくことを意味している。
●p41、8行目:「自律」
原語は「disciplin」。
鍛錬、訓練、しつけなどとも訳すことができる。邦訳で削除した第13章では「自律とは取り組むこと」という項もあり、さらに色濃く反映されている。ここでスポーリンは「良い子」は単に賞賛を求めているだけかもしれず、必ずしも自律ができているとは限らないと指摘している。
●p77 訳者注2 「お互いについていく」:フォロー・ザ・フォロアー
インプロでも、最近使われ始めた「フォロー・ザ・フォロアー」。これはリードするのではなく、フォローすることで新たな展開が生まれるという、スポーリンの重要な概念である。本書では「お互いについていく」と訳してある。詳しい説明はp77の訳注2を参照。
●p195、訳者注5:ノーモーション
ノーモーションについて、スポーリンは他の著書でアメリカンフットボールのクォーターバックを例に出して説明している。日本ではメジャーなスポーツではないので、ここではより馴染みのあるバスケットボールを引き合いに出した。
*クォーターバックは自分に向かってくる敵を味方のディフェンスがブロックしている間に、パスをするか自ら走るかなど様々なプレーのオプションを選択しなければならない。プレッシャーの下でも冷静に周囲を見て、状況判断をする。
●p310、「場所のじゃまと援助」
[サイドコーチング]の最後にある「会話は避けて!」というのは、会話を禁じているのではない。会話に気を取られてじゃますることと援助することを、おろそかにしないようにということ。